01. はじめに

このコラムを、どの様に進めていくか考えました。

私が現役のチェリストだった頃、世界中の名手達と一緒に音楽をしましたが、もちろん音楽性・人間性ありとあらゆる事が素晴らしく感動していました。

私にとって、特に弦楽器の巨匠達と一緒のステージに立つのは嬉しかったのですが、同じ弦楽器奏者として〝何が違うのか?〟という疑問も同時に起きていました。特に右手です。あんなにしなやかに、弓が次の瞬間飛んでいくんではないかと思われる位に柔らかく、それでいて弦にすいついていて pp (ピアニッシモ)から ff (フォルテッシモ)まで自在に操る。

〝何が違うのか?〟私は首席でしたから、数メートル先の巨匠達を、その事をテーマにして観察し続けました。すると、だんだん共通した分母みたいな事が解ってきました。

当時は特に、右手の事に関する指導書はもちろん在りませんでしたから、自分で研究するしかなかったのです。もがき、苦しみながらもだんだん身につき始めた頃、同僚からも「音が変わった。」と言われるようになりました。

新日フィルがアメリカ・ヨーロッパの演奏旅行をしたとき、たしかミュンヘンだったと思いますが、演奏終了後に日本人の女性が私を訪ねてこられて、「主人があなたのボーイングを誉めていました。と伝えて欲しいと言うので伝えにきました。」と仰いました。後に帰国して友人に尋ねると、その方はヨーロッパにおけるボーイングのスペシャリストで、日本人がボーイングを習いに行く先生だという事が解りました。その事で私がボーイングに関して勉強してきた事が間違っていなかったと意を強くしました。

私がボーイングに関して学んだ事を何回かに分けて連載することにします。
ボーイングに関しては、Violin 、Viola 、Cello と95%は共通しています。弦楽器のプレーヤーも是非ご覧下さい。

Yoshihiro Yamazaki
2001.6.7